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5月12日(土曜日) サウジアラビアのジャミングは

 先週このブログで触れた、イランのVOIRI(IRIB)のアラビア語放送に向けたサウジアラビアからのものと思われるジャミングですが、新たにVOIRIのアラビア語放送13785kHzにサウジアラビア国営放送BSKSAの海外向けウルドゥー語放送が「意図的に」混信するようになっています。

 カイロのTarek氏からの情報によりますと、5月2日のUTC1353に、VOIRIのアラビア語放送に急にBSKSAのウルドゥー語放送が混信してきたとのことです。つまり、サウジアラビアが突然周波数を変更してイランのアラビア語放送と同じ周波数でウルドゥー語放送の発信を始めたということです。

 このようなサウジアラビアの電波攻撃は、先日この項目で触れたモロッコによるイラン非難の動き、そして何よりも日本時間の9日午前3時に米国トランプ大統領が発表した「イラン核合意からの離脱」という動きなどとシンクロしています。私の知人のイラン人は「次はイランが攻撃される」と心配しています。

 折りしもトランプはことし11月の中間選挙を控え、ユダヤ人票を狙ったパフォーマンスを繰り広げることに躍起です。イランの核疑惑が根拠のないものであったとしても、イラクやシリアに向けて行ってきたのと同様にイチャモンをつけた上で派手に攻撃することがイスラエル側の利益につながり、米国内のユダヤ票の取り込みが可能になると考えるのはさもありなんという感じです。中国という後ろ盾がついている北朝鮮とは異なり、イランはロシアとのつながりがあるとされるものの、地政学的に見ると米国が軍事攻撃を仕掛けてもすぐさま米国本土や同盟国に対する軍事的リスクが跳ね返ってくるリスクが少ないという点でちょっかいを出しやすいのではないでしょうか。

 「イランの核疑惑」を理由にイランを悪者に仕立て上げて「地域のリスク要因を減らすことに成功した」と喧伝する一方、朝鮮半島の非核化のプロセスを軌道に乗せる(ように見せかける)ことで、トランプが「ノーベル平和賞」候補になるという話まで出ています。11月までの間は特にこのような動きは活発であり続けるでしょう。

 さて、そうした動きの中でのサウジアラビアによるジャミング攻撃・混信作戦です。サウジアラビアは、ジャミングのほかに自国の放送を意図的に混信させることで目的の放送局を聞きづらくするという攻撃を過去にも実施したことがあります。放送の周波数を変えて意図的に混信させる攻撃は、中国の常套手段でもありますが、サウジアラビアも常習犯といえます。1981年のエジプトのサダト大統領暗殺事件直後には、反サダト・反米メッセージを発信するリビアの国際放送「アラブ世界の声」(17930kHz)の周波数に突如BSKSAのアラビア語放送が混信してきて驚いたことがあります。そのときの「意図的な混信」は数か月続き、当然のことながらリビアの国際放送は聞きづらくなりました。今回のイランVOIRIアラビア語放送に対する混信作戦と同じことが行われました。

 中東の親米国サウジアラビアは、米国が沈黙させたいイランの主張がアラブ諸国、特に現状ではイランと関係が深いとされるシーア派反政府勢力(フーシー派)が首都を占拠し続け、内戦状態に置かれているイエメンや、自国内にシーア派住民の多い湾岸のバハレーンやイラク、シリアなどに届くことを極力押さえ込むべく、さまざまな手を使って国際放送ラジオを妨害していくことと思われます。衛星テレビチャンネルについても、イランのチャンネル、特にアラビア語によるSahar TVなどのブーケ(同じ周波数のトランスポンダに割り当てられている複数のチャンネル)からの締め出しや、地上から強力な電波をトラポンに発射する妨害工作などが行われている可能性があります。情報収集を続けます。

 一方で今回のサウジアラビアの動きは、中東地域において短波ラジオがまだ一定の影響力を持っていることを米国やサウジアラビア政府が認識している証であると考えます。冷戦時代が終わり地域紛争の時代に入ってすでに30年近くが経ちますが、電波の世界ではいまも目に見えない闘いが続いています。

<追記>

 サウジアラビアによるジャミングの背景について、書き忘れたこと、しかも大切なことがあります。それは、サウジアラビア自体の問題です。つまり内政。

 サウジアラビアではサルマーン皇太子による改革が進められているとされています。女性の権利拡大、汚職追放等々です。しかしその一方で、サウジアラビアの経済は行き詰まりを見せていますし、皇太子による改革を快く思わない勢力もいます。むしろ皇族や政治家たちの中には快く思わない人たちのほうが多いともいわれています。外交面でもカタールと断交したことを失敗だったと見る国内勢力も少なくないようです。隣国イエメン情勢については、首都サヌアをはじめ、北部の主要都市をイランとつながりが強いとされる反対派(フーシー派)の掌握されてしまっていて、サウジアラビアが影響力をもつ正統政府側は失地回復をはかれていません。

 そうした中、アラビア湾を挟んだ対岸のイランからの挑発行為は続いています。とくにこのようなサウジアラビア国内の状況についてイランメディアが伝えてサウジ国内の不満分子を扇動すること、あるいは隣国イエメンのフーシー派に対するイランからのさまざまな支援は、サウジアラビア政府にとっては看過しがたいことであるでしょう。

 アメリカの動き、モロッコをはじめとするアラブ諸国のイランに対する「イチャモン」、サウジアラビア自身の内憂外患… このような要素も、アラビア湾を挟んだ電波戦がエスカレートする一因となっていることは間違いありません。

Comments: 3

Hir URL 2018-05-14 Mon 23:31:07

ソコトラ情報有難う御座います。D-808は録音機能が付いていないのでお土産なしですw現地特産の三葉虫の化石は購入してきました。。。。北アフリカは無理でも、アラビア半島なら3連休+αで行けるのでちょくちょく行っております。2泊4日か3泊5日ですが慣れれば苦になりません。今年は秋に、ドバイからの日帰りクウェートなぞ計画しております。

KAUNAS URL 2018-05-13 Sun 12:22:10

Hirさま

 お久しぶりです。お元気ですか。
 メッセージありがとうございます。モロッコ、しかもアガディールですか。なかなか通なDestinationでしたね。羨ましい限りです。受信音は録音されたのでしょうか?

 さて、お尋ねのイエメンのソコトラの情報ですが、ご存知の通り現在は旅行は不可能(日本政府は渡航を延期するように勧めていますし)です。UAEが内戦の中ソコトラを事実上占拠しています。いちおうイエメン政府(フーシー派側)のHPには「イエメンの島々」というページがわざわざ設けられていますが、ソコトラのリンクは死んでいます。
http://www.yemen.gov.ye/portal/%D8%A7%D9%84%D8%AC%D9%85%D9%87%D9%88%D8%B1%D9%8A%D8%A9%D8%A7%D9%84%D9%8A%D9%85%D9%86%D9%8A%D8%A9/%D8%A7%D9%84%D8%AC%D8%B2%D8%B1%D8%A7%D9%84%D9%8A%D9%85%D9%86%D9%8A%D8%A9/tabid/2629/Default.aspx
まではいけますが、その先はページがありません。

 民間のウエブサイトの中にはいくつか情報が上がっています。
 http://www.yemenmart.com/ara/soctra.php
 あたりが詳しいかと思います。
 ホテル情報などは
 https://ar.tripadvisor.com/Tourism-g1420957-Socotra_Island-Vacations.html
 に掲載されています。ホテルもできているんですね。

 ソコトラについては、1993年にイエメンに行ったときに渡ることも考えましたが、当時は宿泊施設がほとんどなく、航空便は旧南イエメンのAl-Yamdaだけが週2便飛んでいるだけでした。しかも季節によっては強風のために長期欠航となることも多く、リスクが伴いました。さらに現地に入る場合にはマラリアの予防接種を勧められるなど、厳しい自然状況でもあります。

 近年の内戦状態が勃発する前は、イエメン国営の航空会社Al-Yamaniyahが定期便を出していましたが、現在は首都San'aからソコトラへの航空便は止まっています。そもそもいつミサイルが飛んでくるかわからない状況の中で、イエメン上空を航空機が飛ぶこと自体危険なことですよね。

 サウジアラビアの支援を受けているイエメンの「正統政府」側は公式HPを設けていません。Facebookなどでの情報発信に軸足が置かれています。サウジアラビアから出ているRadio San'aの11860kHzについてもHPはなくて、Facebookで時折情報が更新される程度です。

 店主敬白

Hir URL 2018-05-13 Sun 03:59:38

こんばんは。そろそろラマダーン始まりますね。この連休は、XHDATAのD-808を持ってモロッコ・アガディールに行ってきました。専ら中波ワッチでしたが、地元局以外はモロッコ国内局より、アルジェやカナリア諸島が強く入っていました。全体には、スペイン、ポルトガルが良好で、西サハラ方面はモーリタニアのみでした。短波がなくなり聴けないカントリーなので貴重な存在です。

UAEが占領しているソコトラ島ですが、アラビア語サイトでツーリスト情報なぞ載っていませんでしょうかw

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